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【2026/08/19 08:49 】 |
月夜に偲ぶ
龍+天~龍×涼





「天の戒め…否、天を戒めると書いて天戒かな」

ふと、そう呟いて龍斗は人が悪い笑みを天戒に向けた。天戒は口に運ぼうとしていた杯を止めると、片眉を上げて怪訝そうに見返す。
それは鈴虫の鳴き声だけが響く、静かな蒼白い月が昇る夜だった。皆が寝静まった頃、どちらからともなく九角邸の縁側に落ち合った二人は並んで胡座を組むと、月を肴に天戒の持参した酒杯を傾けた。秋の夜長に月見酒を楽しむこの格別な一時は何物にも代え難く、故にもう半ば習慣となったそれは、時には桔梗や九桐も混ざりつつ夜毎ひっそりと行われている。
そんな特に多くを語る事もなく、いつもただ酌み交わすだけの酒宴だったが、その夜だけは珍しく龍斗は多弁になった。
酒に浮かされ熱っぽい頬を緩め、天戒の関心がこちらに向いたのを確認すると、龍斗は杯の中の月を揺らしながらまた一杯ぐいっと煽り、今度は本物の月を見上げる。

「なぁ、《天》とは何だろうな?この空だろうか?それともこの世を統べているという天帝だろうか?」
「…龍?」
「《天》下の徳川幕府、というのもあったな。…何にしろ、《天》は上から人を見下すものだ」
「…さっきから…何を言いたいのだ?お前は」

龍斗の意を諮れないのだろう、天戒の声は困惑している。
しかし龍斗は構う事なくそのまま続ける。

「《戒》はそのまま戒め…でもいいが、この字には武器を持って防ぐ、という意味もある」
「………」
「《天戒》とは、権力から刀を持って自らを守る。天戒の命は即ち鬼哭村だ。…ずっと、良い名だと思っていた」

そこまで言って傍らを見遣ると、天戒は居心地悪そうに渋面を作っていたが、やがて瞑目して一息吐くと、杯を置いて膝の上で手を組んだ。そして視線を手に落とし、神妙な面持ちで口を開いた。

「…そう言われると、妙な気分だな。俺は…ずっとこの名前は自らへの戒めだと思っていた」
「だろうな…」
「――気付いていたのか?」

龍斗の口振りに天戒は顔を上げたが、龍斗は苦笑して首を振る。

「いいや、でも何となく感じてた」
「…そうか」

それを見て天戒も移ったように苦笑するが、再び顔を引き締めると目線を落とす。

「…天海僧正が結界を張った江戸を、同じ呼び名を持つ九角天戒が乱す。…皮肉と、文字通り《天》下の徳川幕府を戒める、そんな名なのだと俺は思っていた。そして…それが《天》から俺に与えられた戒め…守るべき遺志なのだと」
「そうか…」

ぎゅっと固く組まれた天戒の手に龍斗は目を遣る。手入れも録にされていない武骨なその手の内側は、もう幾つもの肉刺ですっかり堅くなっている事を龍斗は知っている。手練れといわれる使い手達が並べてそうであるように、天戒も幼い頃から血の滲むような鍛練を繰り返したのだろうと容易に知れるその手は、ただのお坊っちゃん育ちとは違う、責任感や使命感への重責に精一杯応えて来た天戒の気性が窺える。
天戒は良くも悪くも真面目過ぎるのだ。

「しかし龍、何故今いきなりそんな事を言い出したのだ?俺は何かお前に心配を掛けるような事をしたか?」
「そうじゃない。これはただのお節介だ。余りお前が気負い過ぎない為のな」
「…俺は、気負い過ぎているか?」
「それが分からない程麻痺はしてるのかもな」

杯を煽りながら言うと、天戒は返事に窮したのか一寸口をつぐむが、軽く頭を振ると困ったように切り出す。

「……龍…、気負い、と言うが、打倒徳川は俺の悲願なのだ。そして何よりも俺の双肩に乗っているのは、お前の言う通り村の者達の命だ。あいつらが俺を信じてついて来てくれる以上、どんなに小さき命であれ俺はこの身を賭して護らねばならん。しかし俺とて人間だ。護る者が増えれば増える程それが手に余るようになるのも事実。この先全てを護り切れる保証もないだろう。しかし、だからと言って諦めていいものでもない。犠牲は少しでも少なく、悲しみは少しでも軽く…。頭目としてその為に気を張るのは当然だとは思わんか?」

龍斗は話の中で徳川幕府、とは言ったが、直接何を指して気負っているとは言っていない。謀らずも天戒は自ら告白してしまっている訳だが、気付いているのだろうか。
だがそこには敢えて触れず、龍斗は話の先を続ける。

「…なぁ、この世に自分の子供に自分の恨みを託した名前を付ける親なんているのかな?誰だって自分の子供には未来を託した名前を付けたいものじゃないのか。それは天戒の親だって同じだと俺は思うぞ」

勿論龍斗は天戒の両親を直接知る訳ではないが、周りの話を聞いているとその人と為りは保証出来るのだろうと思う。何より天戒を見ていればそれは一目瞭然で、他にも忠誠心に厚い九桐や嵐王、村人に混じっている旧来の家臣の在り様を見ていれば、自ずと知れようというものだ。
しかし天戒はどこか残念そうに嘆息すると、苦々しく呟いた。

「…父や…母の無念さはお前には分からんさ」

その頑なで淋しい響きには、これまで天戒が一念に貫き通してきた想いの強さをありありと感じる事が出来るが、やはり龍斗にはどこか危うげに見えてしまう。
これまで幾度も感じてきたそれは、しかし最近では形を潜めたように思われていたのだが。

「そうか…」

一瞬にして強固な壁で拒まれてしまったようで龍斗はやや落胆するが、それで天戒を案じる気持ちが変わる訳もない。

「でもな天戒、俺は少しでもお前に力を抜いて欲しいって思ってるんだよ」
「龍…」
「頭目の立場ってのも分かるし、確かにそれは自覚を持って務めなければならない事だ。だけど俺はお前を鬼道衆頭目の九角天戒じゃなくて、ただの九角天戒っていう友達だと思っている」
「………」
「何も知らないくせにとお前は言いたいかもしれないけど、そうじゃなきゃ…友達じゃなきゃ言えない事だってあるだろう?」

少なくとも、いつだって龍斗は天戒にそう接して来た。誰かの上に立とうとも、下になろうとも思った事はない。だから天戒の本当の気持ちも立場も、この先も自分には永遠に分かる事は無いのかもしれないが、それでも龍斗は天戒が好きだから、彼が本当の意味で平穏を得られる事を願っている。天戒だけじゃない、それは他の鬼道衆の皆へも同じで、龍斗は彼らに常にそれを願っている。
目を見開いて見返して来る天戒に軽く笑い返して、龍斗はまた酒を、今度は置かれたままの天戒の杯にも満たすと、自分の杯を軽く掲げてみせてからぐいっと呑み干す。

「ほら、天戒も呑めよ」
「……ぁ…あぁ……」

しかし頷きながらも天戒は戸惑っているようで、龍斗と自分の杯を迷う様に見比べている。龍斗は横目でそれを見ながら次々と酒を注いでは呑み干して行く。

「龍…幾ら何でも呑み過ぎではないか?」

そうして暫く沈黙が続いたが、十杯目を越えた辺りになってようやく天戒が声を発した。その頃には既にはっきりと酔っている事を自覚していたが、龍斗はふふん、と鼻で笑うと、また一杯煽る。

「天戒が呑まないから呑んでるんだろう?」
「何故俺の所為になる」
「俺は天戒が呑むまでは止めない」
「…聞いていないぞ」
「言ってないからな」

龍斗は顔を顰める天戒を無視してまた注ごうとするが、しかし横から素早く徳利を奪われてしまう。

「ふん、呑めばいいのだろう、呑めば」

中の酒を零しながら乱暴に杯を持つと、天戒は半ば自棄気味に呑み出す。

「そもそも俺の貴重な最後の酒をお前一人でぐびぐびと呑みおって。もう殆ど残っておらんではないか」
「明日また買って来てやるよ」
「当たり前だ。全くお前という奴は…」

ぶつぶつと言いながら呑む天戒を眺めながら、龍斗は酔いの心地好さに任せて呟く。

「…だからさ、天戒、酒の力を借りてでもいいからさ、俺には話してくれよな」
「…―――」

天戒の手がぴくりと止まる。
龍斗は火照った身体に気持ち良い夜風を感じながら目を瞑り、涼やかな虫の声に耳を傾けながら微笑する。

「俺にはどんな柵も無いし、お前の過去もろくに知らない。だから幾らでも無責任な事を言ってやれるからさ」
「……自分で言うか」

天戒は呆れたように言うが、その調子は笑い含みだ。

「本当にお前はお節介が過ぎるぞ、龍」
「これが取り柄だと思ってる」
「ふ…、しかも良い性格をしている」
「誰かさんと違って柔軟なんだよ、俺は」
「お前、本当に頭目である俺を敬う気は無いのだな」
「敬って欲しいのか?」
「…いや」
「だろ?」

はは、と笑って、龍斗は天戒の気を抜かせる様に軽く背を叩く。

「まぁ安心しろ。敬わなくてもちゃんと仕事はするし、この村とお前達の事は俺も護りたいからさ」
「龍…」
「そういう訳だから、あんまり無理するなって話だ」
「…ああ、忠告と思って受け取っておこう」
「おう」

にっと笑った龍斗の目に映る天戒の表情は、少し穏やかさを取り戻して和んでいる。

この時龍斗は、心のどこかでこの時が永遠ではない事を予感していたが、まさかあのような形で終焉を迎えるとは想像もしていなかった。自分の力が足りなかったばっかりに、目の前で失われた大切な仲間。
そうして胸に空いた穴は大きく、時は無情にも龍斗一人を残して巻き戻ってしまった。
ふと、見上げた月はあの日と同じ形をしている。

あの時共に呑み交わした友もまた、こうして同じ月を眺めているのだろうか―――――





「すっかり遅くなってしまった…。皆はもう寝てしまっているだろうな」

龍泉寺の廃れた門扉の潜戸を潜りながら、涼浬は苦笑気味に呟く。その手には土産にと夕刻買った団子があったが、その帰り所用を思い出しそちらに寄っていると、すっかり帰りが夜更けと遅くなってしまった。お陰で今夜皆で食べようと思っていた団子が届けられず、明日食べようにも朝にはもう固くなってしまっているだろうと思うと、少し残念な気分だ。
では一人で遅い夕餉代わりに食べてしまおう、と涼浬は境内の玄関を音を立てないように抜けて、自分に宛がわれた部屋へ向かう。そして後一つ角を曲がれば到着という所で、涼浬ははっとして足を止めた。

「――――…」

行き道の先、境内の中でも広めの庭に面したそこに一人座っていたのは、もう寝てしまっているだろうと思っていたこの寺の居候の一人、緋勇龍斗だった。こんな時分にたった一人、ひっそりと月を肴に杯を傾けている。
酒は一人で呑んでも美味くない。そう言っていつも誰かしら引っ張って行く龍斗にしては珍しいその光景に、涼浬は何かあったのだろうか、と怪訝に思う。
現に龍斗はこちらに気付く様子もなく、その横顔をよく訝れば少しばかり物憂げにも見て取れる。しかし龍斗を神秘的に包む月の光の効果も相俟って、気になりはしたが、何となく声を掛けるのが憚られ、涼浬は進もうとした足を躊躇させる。しかしここを通らねば部屋へ辿り着かない手前、いつまでもこうしている訳にもいかないのだが。

「…ん、涼浬か?」

しかしどうするか迷っている内に龍斗はようやく気付いたようで、ふと振り向くと声を掛けてくる。

「…あ、はい…すみません…」
「何で謝るんだ?」

涼浬は邪魔をしてしまったようでつい謝ってしまうが、龍斗は気にする様子もなく笑うと、自分の横を指差した。

「そんな所に突っ立ってないで、こっち来いよ」


「…随分遅かったんだな」
「ええ、予想外に長引いてしまって…」
「そうか…、お疲れさん」

仕方なく遠慮がちに座った涼浬に龍斗は置いていた杯を渡すと、酒を注いでくれる。しかし涼浬はそれを受け取っても中々口に運べないでいた。

「…ん、呑めないんだっけか?」
「はい、余り…」
「そうか、残念だな」

別に一滴も呑めない訳ではないが、涼浬は酒が苦手だった。あの独特の苦さもそうだが、酔うとどうなるものか分からないのが嫌だった。
すると龍斗はわざとらしいくらい残念そうな表情を作ると。涼浬から杯を取り上げて代わりに呑み干す。

「ふ~…。こんなに美味いのにな」
「美味い…ですか…」
「?ああ、美味いよ」
「一人でも?」
「―――え…?」

良さげな表情で酒を呑む龍斗の横顔をじっ、と見つめた涼浬の、ふと口を突いて出た言葉に龍斗は目を丸くして振り向く。

「…いきなり妙な事を言うんだな」
「あ、いえ…ただ…なんとなく…」

しかし言っておきながら何故か急に罰悪くなり、涼浬は顔を逸らすと、誤魔化すように脇に置いていた団子の包みを差し出した。

「そ、それよりお団子はいかがですか?皆さんのお土産にと買ったのですが、こんな時間なので無駄になってしまって…」
「ん~?でもなぁ…、人の酒を断っといて自分の団子は食えってのもなぁ」
「え、あっ…そ、そうですよね、すみません…」

不満そうな声を出す龍斗に涼浬は萎縮して手を下ろす。そして何故だか居心地も酷く悪くなり、涼浬はもう立ち去ろうと腰を上げあげようとするが、それは不意にぽんと肩を叩かれた事で思い止まらされる。

「嘘だって、冗談に決まってるだろ。有り難く頂くよ。」
「………」

そう笑って龍斗は戸惑う涼浬から団子の包みを取り上げ、一串頬張る。

「ん、酒と甘味も中々合うな」
「………」

一人で頷きながら団子を食べる龍斗を見ながら、涼浬はどうしたものかと途方に暮れる。
龍斗が何かを憂いているのは確かだが、話してくれない以上涼浬にはどうする事も出来ず、またどうにかしたいと思っても、そういった気の利いた言葉は涼浬には向かない。かといって龍斗が今まで自身に砕いてくれた心を思えば、このまま放っておく訳にもいかない気がした。
立ち去るべきか否か、ぐるぐると思考を巡らせていると、龍斗がちらりとこちらを見て苦笑した。

「ごめんな」
「…―――」

突然のことに驚いて涼浬が首を傾げると、いや、と龍斗は照れ臭そうに鼻を擦る。

「なんか、気を遣わせてるだろ」
「ぁ……」
「俺、落ち込んでいるか?」
「…そう見えます」

問われるまま素直に答えると、龍斗もまた苦笑しつつも素直に頷く。

「俺さ、一人で酒呑むの好きじゃないんだ」
「存じてます」
「うん。だけど、たまには縁側で誰か待つのもいいかなって思ったんだ」
「誰か…ですか?」
「そう、誰か。来るかもしれないけど、来ないだろう誰かだ」

龍斗にしては珍しくあやふやな言い方をして、摘まんだ串をくるくると指先で弄る。

「なんでだろうな、急にそんな事を思ったんだ。こんな夜の所為かな」
「…それでも、その誰かを待っているのですか」

少なくとも涼浬ではない誰かを龍斗は待っている。そしてそれが誰かも龍斗は知っているのだろう。一人で呑んでいたのに、二つあった杯が何よりの証拠だ。
月を見上げる龍斗の横顔に、涼浬はふといつかと同じ色を見つける。何かを悔いるような、それでも懐かしむような、理屈ではない感情に浸かった横顔。それはきっと涼浬達と出会う前の大切な記憶達だ。
あの事は今も自分しか知らないのだろうか。だが知っているからこそ、情けないかな涼浬はそれ以上は恐くて踏み込めなかった。

「…でも、涼浬が来てくれたからな」
「―――え…?」

しかし、俯き消沈しようとする心に穏やかな声が届き、涼浬はゆっくりと顔を上げる。

「涼浬が来てくれたから、一気に酒が美味くなった。ありがとうな」
「―――…」

涼浬の戸惑いなどまるでどこ吹く風で、杯を月に掲げゆったりと穏やかに笑う龍斗はいつも以上に優しげで。ずるい、と涼浬は熱くなる頬を隠すように眉をしかめて顔を逸らした。
龍斗は涼浬にだけと昔を話しておきながら、敢えてもうそれ以上は匂わす程度にしか話さなかったくせに、いきなりこうしてそれを知る者にしか分からないような事を言い甘える。例えそれを見抜かれていたとしても、涼浬なら無下にもぞんざいにも扱えないだろう事を承知した上で。
そしてそれにまんまと嵌まっている自身も愚かなものだが、それは過去に嵌まり一人で哀愁に耽る龍斗も。
涼浬はやれやれと溜息を吐きつつも徳利を取ると、龍斗に差し出す。

「え…?あ、ああ…」

そして戸惑う龍斗の杯に一杯注いでやり、微笑を向ける。

「では、この一杯で最後にしてください。私も疲れています。早く休みたいですから」
「―――……」

そう、無下に扱えないなら付き合うしかないのだけれど、たまには意地悪を言って困らせてみたい。しかし、とはいっても涼浬には不慣れな行為であるから、案の定龍斗は目をぱちくりさせながらこちらを見、次いで参ったなという風に頭を掻いただけだった。

「…はい」

しかしそうして大人しく頷いて、宣告された最後の一杯をちびちびと逞しい身体を縮こませながら啜るものだから、つい可笑しくて涼浬はくすくすと笑ってしまう。

「…笑うなよ」
「すみません、つい」

龍斗はその様子にむすっと口を尖らすが、何かに思い至ったのか、いや、と呟いてまたがしがしと頭を掻くと、ぱんと膝を叩いてぐっと月を仰いだ。

「笑っても良いんだ」
「?」

そして和やかな空気から一変して真面目になる声音に、涼浬は笑いを止めて小首を傾げる。

「感情も仕事も、無理しなくていい。少なくとも俺の前では」
「?龍斗さん?」

涼浬が突然何を言い出すのかと目を丸くしていると、龍斗は強い光を宿した眼差しを向けてきた。

「涼浬が頑張らなくても、俺が涼浬を絶対に守るから」

そうして紡がれた言葉は、そんな悲痛な顔をして言うには強く、燃えるような決意を宿して涼浬の耳から心へと響く。

「―――――…」

――護らなくては。
勝手に、もう話は済んだとばかりにまた月を見上げる龍斗を呆然と見つめながら、何故か、涼浬は不意にそう思った。

月は二人を淡く照らす。
同じ時を違う場所でまた刻んでいる龍斗。先程も思ったが、きっと彼にとって二度目のこの月夜は、否、ひょとしたら二度目の全ての夜が、悔恨と郷愁に駆られる刻なのかもしれない。
――それは、やはり愚かだと思うから。
涼浬はきゅっと唇を噛み締める。改めて胸に刻まれた想いは少しの悔しさも相俟って、今迄の純粋な物とは少し違う感覚で胸に降りてくる。
本当に何故そう思ったのか。今の涼浬には分からなかったが、それでも、このままでいい訳がないのは確かだった。
涼浬もまた、ぐっと月を仰いで、眼差しを強くする。

これ以上、この人が独り傷付かずに済むように―――――









龍斗と涼浬と天戒(+鬼道衆)。ちょっと暫くこれを続けようかなって思ってます。
今迄の懐抱とこれは陰陽編の最中って感じですが、陰陽ディスク終了から邪ディスク開始までの間の、三者の心変わり的な物を書こうかな、と。
だって邪編に入って片方の組は主人公と過ごした記憶なさげやのに、普通にいきなり最初っから師匠だのたんたんだのたっちゃんだの馴れ馴れしくて不自然なんやもん。それまでは普通に敵側は緋勇とか言ってたクセにさぁ。
という訳で、今切りのいい剣風は一先ず置いといて、次は外法をちょっと中心にやります。
…すっげぇトロいだろうけど。


拍手[3回]

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【2010/04/16 18:41 】 | 主×涼小説 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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