その夜の如月骨董品店は賑やかだった。不定期だが既に恒例となって久しい麻雀大会に今宵も集まる常連客、壬生紅葉と村雨祇孔。そして今一人の珍客が御門晴明。家主の如月翡翠と押し掛け見物人緋勇龍葉も加えて、ジャラジャラと雀牌が緑の雀卓の上で混ぜられる。
「…それにしてもぉ、御門くんが来るなんて珍しいねぇ。芙蓉ちゃんは〜?」
如月と壬生の間の角に座り、人差し指で波から外れて飛んでくる牌を弾きながら、紅一点龍葉は呟く。
「芙蓉は今日は休ませています。ここには貴女がいると知っていれば来ませんでしたよ。そもそも村雨が…」
龍葉の斜め前、壬生と村雨の間に座りながら、さらりと返す御門は少々不機嫌そうに村雨を睨む。
「お前が今夜は予定ないっつうから連れて来てやったんだろ」
如月と御門の間に座る村雨は、御門の冷たい視線を受け流し飄々と答える。
「無理矢理連れて来た、の間違いでしょう。面子が足りないといっても他に幾らでもいるでしょうに」
「だが張り合いのある奴は中々いねぇからな。それにお前ただでさえ付き合い悪ぃんだからたまにはいいだろ」
「私は貴方程暇ではないんですよ」
「はっ、高校生で労働たぁご苦労なこったな」
「高校生で博打とは堕落人生まっしぐらですね」
「…お二人供、それくらいにしてそろそろ始めませんか?」
相変わらずの嫌味の応酬をする御門と村雨に苦笑しながら壬生が割って入る。
「そうだな。御門君の気持ちも分かるが、今は折角集まったのだから」
「…仕方ありませんね」
如月にも宥められ、御門は扇子を口許に広げながら溜息を吐く。対する村雨はそうだそうだと他人事のように囃し立てるが、そのそばから如月に叩かれている。
「エヘヘぇ、御門くんの負けだね〜。素直に楽しみなよぉ」
そんな四人のやり取りを見ていた龍葉がへらへらと笑いながら手を振ると、観念したと思われた御門の眉が再びぴくりと反応した。
「私が何よりも気に入らないのは貴女がいる事なんですがね」
「え〜?」
「大体いるならいるで私じゃなく貴女が参加すればいいものを、ただ見ているだけというのも不愉快ですし、知った仲とはいえ、こんな夜中に女性一人で男四人が集まる場所に現れるのも感心できません」
「あぁそれなら大丈夫だよ〜。何かあっても翡翠くん以外には指一本触れさせないからぁ」
さらりと凄い発言をする龍葉に如月は思わず飲み掛けていたお茶を吹き出しそうになる。龍葉は咳き込む如月を横目に人差し指を合わせてしおらしくしてみせた。
「御門くんや祇孔くんも嫌いじゃないけど〜、そういうんじゃないっていうかぁ…」
「貴女は一体何を仰ってるんですか。誰も何を間違っても貴女にだけは手を出しませんからご安心を」
「え〜!翡翠くんもぉ?」
龍葉は不満そうな声を上げて如月を覗き込むが、如月はまだ咳き込みながらも目を背ける。
「…万が一にも無いと思うよ…」
「そ、そんなにぃ…?」
「ほら見なさい。全く下らない事を言ってないで、見物人は見物人らしく大人しくじっとしてらっしゃい」
「むぅ〜…御門くんの嫌味っ子ぉ!」
「嫌味…っ子?」
「紅葉く〜ん!」
壬生に泣き付く龍葉の、自分を形容する聞き慣れない幼稚な単語に御門は眉の端を引き吊らせる。
「いいぞ先生〜。もっと言ってやれ」
それを面白がる村雨も不愉快で、御門は彼に雀牌を一つ投げ付けるとそっぽを向いてしまう。
「あれぇ?御門くんがあっさり引き下がるなんて珍し〜」
いつもと違い大した反論もない御門に龍葉は意外だと目を丸くすると、御門の扇子から覗く目が冷ややかなものになる。
「…龍葉さん、いるものは仕方ありませんからもういいですが、なるべく私には構わないで下さい」
「なぁにそれぇ?」
「正直これを告白させられるのはかなり不本意なんですが、私は貴女が苦手なんですよ。言動が予測不能ですし、何を考えているか分からない。この私が」
「そ、そうかなぁ…?」
偉そうな物言いは忘れていないが、わざとらしく大仰に溜息混じりで話す御門に龍葉は困惑する。
理解出来ないとか変人とかはよく言われるが、この平成の大陰陽師で天才の御門晴明にまでそれを言われるとは思っていなかった。
少し気落ちする龍葉だが御門は構わず、それに、とあらぬ方を見て呟く。
「今日はこちらの方角は不吉を示しているので、なるべく近寄りたくなかったのですが…」
「不吉?まさか何か事件でも…」
これには如月が反応するが、御門はさて、と扇子を閉じるとお茶を一口飲む。
「詳しい事までは判じれませんが、そういった類の事であればまだいいのですが…」
「どういう意味です?」
「さぁ?私にも分かりません。ただ何となく嫌な予感がするだけですよ」
やがて的中する事になる御門のこの予感に各々微かに緊張を走らせながらも、麻雀大会はかくして始められた。
「お、如月それ貰うぜ。へへっ、ロン」
「ム…」
「…ほぉ、小三元ですか」
「流石村雨さん、今日も調子が良いですね」
「俺が本気になりゃあざっとこんなもんよ。悪ぃな如月。ほら寄越しな」
「…ふん。まだまだこれからだ」
麻雀が始まって数時間後、場はすっかり白熱して、とうに御門の不吉な予感への緊張も霧散していた頃、男四人の熱い勝負を小説を片手に見守り続けていた龍葉は、流石に退屈になって壁に凭れながらうとうととしていた。壬生は雀牌を混ぜながらふとそれに気付き苦笑する。
「…龍葉、大丈夫かい?」
「ん〜…」
龍葉は目を擦りながら右手をのっそりと持ち上げる。
「無理しないで今日はもう帰ったらどうだい?今ならまだそんなに時間も遅くない事だし」
如月は九時を半分回った時計を見る。
そもそも真剣な余り和了(麻雀におけるあがり)の時以外には特に会話もない勝負をただ見続けるのは、幾ら一人遊びが得意な龍葉でも辛い物があるだろう。
「先生、なんなら俺と代わるかい?」
「わたしぃ、麻雀って頭使うから苦手でぇ…」
「おいおい冗談言うなよ。苦手であれだけヤられて堪るかっての」
村雨は以前イレギュラーで龍葉が参加した麻雀を思い出す。村雨が不調だったとはいえ、龍葉のあのへらへら笑いながら次々に和了していく悪びれない強さには皆戦慄を覚えたものだ。
「あの時は調子良かっただけだよぉ」
「ほぉ…やはり頭だけは良いようですね」
「それ前にもどこかで言われた台詞〜…」
御門が揶揄すると、龍葉は溜息を吐いてちらりと物言いたげに如月を見る。しかし如月はそれを無視して雀牌を並べながら、目もくれずに聞いてくる。
「で、帰るのかい?それとも、まさかここで寝る気じゃないだろうね?」
「むぅ〜…帰りますよぉ〜だ。帰ればいいんでしょぉ」
「一人で帰れるかい?」
拗ねて立ち上がり、ピーコートを羽織る龍葉に壬生が少々心配そうに聞くと、龍葉はにこりと笑顔を向ける。
「大丈夫だよぉ。ありがとぉ紅葉くん」
「そう、くれぐれも気を付けて。御門さんの言ってた事もあるからね」
「ん、分かってる〜。それじゃあ皆も程々にねぇ」
龍葉はひらひらと手を振って居間を出るが、出た所にコンビ二の袋が置いてある事に気付き中を覗く。入っていたのは缶ジュース数本とおつまみ類だった。
「…これ翡翠くんが用意したのぉ?」
「?いや?覚えがないが…」
「あぁ、すっかり忘れてたぜ。俺が土産に持って来てやったんだ。飲んでいいぜ」
持って来たのは村雨らしく、丁度喉が乾いていた龍葉は瞳を輝かせる。
「本当〜?やったぁ!あ〜…でも温くなっちゃってるやぁ…。翡翠く〜ん、氷とコップ借りてい〜い?」
「ああ、構わないよ」
如月の了解を得て龍葉はいそいそと袋を抱えて、居間の隣の台所へ入っていく。
「お前らも後で飲めよ」
「ええ、いただきます」
「それより続きを始めようか」
そうして再び男達の真剣勝負が始まったが、程無くしてガシャンという硝子の割れる音がして、意識を現実に引き戻された。
「何だぁ?」
「龍葉…?」
「まさか―――」
三人の脳裏に御門の言葉が蘇る。
まさにとてつもない嫌な予感に、御門を除いた三人は勝負そっち除けで台所へ向かった。
「龍葉!」
「……いない…?」
踏み込んだ台所には人気がなく、床には龍葉が使ったと思われるコップが割れて、氷と共に破片が散らばっているだけだった。流し台に面する窓も割れている事もなく閉まったままで、まるで龍葉だけが消えたような有り様に三人は愕然とする。
「おいおい…どうなってんだ…?」
「一体…何が…」
如月が呆然と呟くと、ふ、と足元に影が現れ、気付くと同時にいきなり飛び掛かってきた。
「翡翠くぅ〜ん!!」
「―――?!!」
あまりに突然の事に反応が遅れた如月は体勢を崩し、どしん、と音を立てて尻餅を着く。
「如月さん!って…龍葉?!」
吹き飛ばされた如月に慌てて振り返る壬生だが、その先の光景に我が目を疑い絶句する。
如月に縋りつくように首に腕を回し、まるで猫が甘えるように朱に染まった頬を胸元に擦り寄せている龍葉と、驚きの余り動けないでいる如月。有り得ない光景に壬生と村雨は暫し呆然とするが、一足先に状況を把握した村雨は帽子の鍔を引き下げて笑みを浮かべる。
「あ〜あ…まさか般若湯を飲んじまうとはな」
「般若湯…って!まさか村雨さん!」
壬生はコンビ二の袋の脇に置かれた空缶を確認する。見た目こそカ○ピスそっくりだが、そこにはしっかりと[これはお酒です]と書いてある。
「これ…カ○ピスサワーじゃないですか…。僕達は未成年ですよ」
「へへっ、世間には酒を売ってる自販機もあるんだぜ。ほんの冗談のつもりだったんだがな、見事に当たっちまったな」
「――…村雨…貴様…」
悪びれた様子のない村雨に如月の地を這う様な低い声が響くが、如月が動こうとする前に龍葉にがしっと両頬を掴まれて、間近で妖艶に微笑まれる。
「んふふ〜、翡翠くんだぁ〜い好きぃ」
そうして酒の臭いをさせながら更に顔を近付け、如月がその意味を理解する前に柔らかい唇で少し乾いた唇を塞いだ。
「っ――――?!」
まさかの展開に如月は目を見開き硬直する。龍葉は尚も唇を押し当てたまま一向に放す気配もなく、どうやら酒にもキスにも相当酔っているようだ。
「ヒュ〜、やるねぇ先生。そのまま最後までイっちまえ」
「………」
その様に村雨は面白そうににやにやと笑うが、壬生は気まずそうに目を反らしている。
そうして長い長い一分が経った頃、ようやく龍葉は如月の唇を解放して、にっこり満面の笑みを浮かべた。
「エヘヘぇ、翡翠くんと初チューしちゃったぁ」
赤い顔でこの上なく上機嫌な龍葉と、青い顔で言葉も出ず呆然としている如月との温度差は激しい。龍葉は更にコートを脱ぐと、胸のリボンに手を掛けするりと解く。そしてそれを如月の首に軽く回すと蝶々結びをして、結い目を人差し指で軽く叩いた。
「翡翠くんはぁ、わたしの物だからぁ、わたしを好きにしていいよぉ?」
おねだりをする様に甘い声と上目使いで迫る龍葉に、流石に我に返った如月は龍葉の頭を掴むとぐぐっと押し返す。
「…い、いい加減に…してくれ…っ!」
「照れなくてもいいよぉ〜」
龍葉と如月が力比べをしていると、そこに呆れたような冷ややかな声が割って入った。
「……全く、下品極まりないですね」
「御門さん…」
今まで我関せずと見物を決め込んでいた御門は、不快そうに眉間に皺を寄せ、軽蔑の目を龍葉に向けている。
「なぁにぃ御門くんってばぁ相変わらずすましちゃってぇ〜」
周りより一段低い声に、龍葉は如月から御門へと視線を移すと如月から退いて、雀牌の山を崩しながら雀卓の上に片膝を乗せると、ぬっと御門に向かって身を乗り出す。
「何です…?」
御門は怪訝そうに扇子を二人の間に広げるが、龍葉はばしっとそれを弾くと据わった目で怪しく笑い御門の頭をがっしり掴んだ。
「…――!?」
先程の如月と似たような状況に御門は咄嗟に龍葉を押し剥がそうとするが、女でも酔っ払いの力は予想外に強く、中々放さない上に更に顔を近付けてくる。
「嫌味っ子の御門くんにはぁ、お仕置きが必要だよねぇ〜」
「なっ…龍葉さんっ…!」
冷静沈着で慇懃無礼。そんな御門でさえこの状況には流石に動揺しているのが端から見ていても分かる。
対する龍葉は相変わらず楽しそうにずいずいと顔を近付けると、御門の唇まで後数cmの所まで迫る。
「み〜か〜ど〜く〜ん」
「っ…!」
あの《東の棟梁》御門晴明をここまで追い詰める《黄龍の器》緋勇龍葉に、彼の親友村雨祇孔も、野次よりもただただ感心するしかない。壬生ももう手に負えないと見守るしかなく、如月に至っては対象が移った事に安堵している風さえ見せた。
御門がその場にいる全員を呪ってやろうかと恨めしく思っていると、いよいよ龍葉は後1cmの所まで迫り、ここまでかとついに御門は覚悟を決める。しかし触れるか触れないかの距離で不意に龍葉は止まると、ぷっ、と吹き出した。
「…?」
「なぁ〜んちゃってぇ〜」
「……はぁ?」
龍葉はがばっと上体を起こし雀卓の上にぺたりと座ると、けらけらと笑いだす。
「わたしが翡翠くん以外にそんな事する訳ないじゃなぁ〜い。御門くんってばマジになっちゃっておかしぃ〜」
お腹を抱えて笑う龍葉に如月と壬生、村雨はぽかんとするが、御門だけは状況を理解し屈辱に身を震わすと、静かにゆらりと立ち上がった。
「……緋勇龍葉…。酔っていても義理固いのは誉めて差し上げましょう…。しかし、私にこれ程の屈辱を味あわせた罪は重いですよ…」
口許に酷薄な笑みを浮かべ、ぎんっと底冷えするような目で龍葉を見下ろすと、御門はどこからか霊杖を取り出す。それでも龍葉は堪えず、逆に笑顔のまま挑発的な言葉を吐いた。
「あれぇ?怒ってるのぉ?いつも冷静沈着な晴明様がこれくらいの事でぇ?」
「私はね、龍葉さん。どんな些細な物でも受けた物は必ずお返しする主義なんですよ。それが例え恩だろうと屈辱だろうと必ずね…」
「流石御門くんらしくねちっこい主義だねぇ」
「本当に…いい度胸です」
「お、おい御門…」
「龍葉っ…謝るんだっ…」
今にも爆発しそうな御門の本気を感じ取った村雨と壬生が慌てて二人を止めようとするが、龍葉は聞き入れずすくっと立ち上がると、今度は御門を見下ろす格好になりふんぞり返る。
「エヘヘぇ、御門くんにわたしが倒せるかなぁ」
「ほぉ、面白い。試してみましょうか?」
もはや一触即発の最凶の二人に止める者は誰もいないのかと壬生と村雨が途方に暮れていると、一人尻餅を着いたままだった如月がようやく立ち上がり、勝負に割り込むと素早く龍葉の項に手刀を喰らわせた。
「はぅ…っ」
ふにゃりと膝から崩れる龍葉を受け止め、如月はそのまま抱え上げると雀卓を降りる。
「如月…」
「このままじゃ店を壊されかねないからな…」
「龍葉は…」
「気絶…というより寝てしまったようだね」
如月は龍葉を床に下ろし柱に凭れさせると、御門の方を向く。
「御門君、怒りは最もだが落ち着いてくれないか?君と龍葉が暴れたら本当に町一個潰れかねない。彼女には僕からきつく言っておくから」
「……」
そんな事で矜持の高い御門の怒りなど当然収まる筈もないが、そこは大人社会で揉まれる御門家当主である。盛大に不機嫌そうな溜息を吐くと、弾かれた扇子を拾い上げ、いつものように広げてつんとそっぽを向いてしまう。
「まぁ…関係のない、むしろ被害者の如月さんにまで迷惑を掛けるのは本意ではありませんからね。この場は大人しく退くとしましょう」
「ああ、そうしてもらえると助かるよ」
「それよりよぉ、この酔っ払いどうするよ。マジで寝入っちまってるぜ」
御門の怒りを鎮めた所で、村雨が屈んで龍葉を覗き込みぺちぺちと頬を叩く。龍葉は四人の心境等露知らず、気持ち良さそうに可憐で無邪気な寝顔を晒している。
「人の気も知らないで…ムカつく寝顔ですね」
御門は扇子でぽかりと額を叩くが、やはり起きる気配はない。
「やっぱここは保護者が責任を持って連れて帰るべきだよな」
「保護者って…」
壬生がまさか、と顔をしかめると、案の定壬生を指差してくる。
「やっぱり僕ですか…」
「待て村雨。壬生は反対方向だろう。ここは酒なんか持ってきたお前が責任を持つべきだ」
「げっ!俺かよ…」
「そうですね、新宿の方でしたら村雨が丁度いいでしょう。帰りに歌舞伎町で遊べますよ」
「御門お前どうせ車呼ぶんだろ。ついでに乗せてって…」
「はぁ?」
村雨の言に御門は一瞬で有り得ないと絶対零度の眼差しを向ける。
「たくっ…、じゃあ如月が泊めてやれよ」
「冗談じゃない。暫く顔も見たくない程なのに」
「村雨さん。お二人に頼むのは可哀想ですよ。今日は僕が連れて帰りますから」
各々の様子を見兼ねた壬生が進言すると、村雨はころっと機嫌を良くする。
「お、流石壬生だな。俺達のリーダーだ。丁重に頼んだぜ」
村雨の言い様に壬生は苦笑しながら帰り支度をすると、力無い龍葉にもコートを着せて背負う。
「では遅くなりますし、今日はこれで失礼します。あぁ、片付け手伝えなくてすみません」
「そんな事はいいんだが…大丈夫か?やはり村雨に…」
「平気ですよ。それでは、また」
軽く会釈すると、壬生は龍葉を背負ったまま如月家を後にして行った。
後に残った三人は部屋の現状にうんざりする。居間には飛び散った雀牌、台所には散乱した硝子の破片。
「…幾つか無くなっていそうですね」
「硝子も片付けないとな…」
「こっちの首輪もいつまで付けてんだい?」
村雨は呆れている如月の首に巻かれたリボンを指してにまにまする。如月ははっ、と思い出すと慌てて外して投げ捨てた。
「『わたしの物だからわたしを好きにしていい』か…。羨ましいねぇ。まさに据え膳食わねば何とやらってな」
「村雨!」
如月は頬をやや染めて村雨の胸倉を掴むが、今日はそれ以上の気力もなく諦めてがくりと首を落とすと、雀牌を拾いだす。
「…お前も手伝え村雨」
「へいへい。御門も手伝えよ」
「…分かってますよ」
雀牌を拾いながら、如月は目に付いた投げ捨てたリボンに、ふと龍葉の柔らかい唇の感触を思い出し眉を潜める。しかしその頬は微かに朱に染まっていて、如月は冗談じゃないと内心毒ついて目を背けると、再び片付けに専念しだした。
「…そういやぁ御門の嫌な予感ってぇのは先生の事でいいのか?」
「…これ以上嫌な事が起こるとも思えませんからね」
「確かに化け物よりも厄介だったな、あれは」
「龍葉に酒は禁物だな」
これ以後、例え成人して無礼講の場でも龍葉には酒を飲ませないという事が如月達の暗黙の了解となった。
そしてこの日以降、龍葉は暫し如月骨董品店には出入り禁止となり、御門からは一層邪険にされるのであった。その時の記憶を無くしていた龍葉は、その処置にひたすら困惑するしかなかったという。
終
要するに酒乱ネタですね。書き易い。
龍葉は酔うとエロくなる訳でも絡み酒になる訳でもなくて、気がやたら大きくなるんです。あの御門さえも恐れない程に(笑)
でも多分仲間とはいえ普段から御門の嫌味っぽさにはそれなりに思う所があるから、酔った時龍葉はあんな風につっかかるんだろうなと。水と油みたいに質の違う天才同士?要するに相性悪いって事かな?
しかし御門って好きなキャラではあるけど、あの長髪はどうにかならんのかね(笑)顔は美形なんかもしれんけど、5年後の絵でさえ長髪にスーツで拭いたんだぜ。2003年という時代にどんな色物社長(笑)しかも「財界のプリンス」って…腹痛いwwww
彼は5年後で一番笑わせて貰った人物ですw一番惚れたのはマリィやけどwエロくなった…。
そういえばさらりと如月との初ちゅーを済ませてしまったけど良かったんだろうか…。
壬生は保護者ポジションでいいのかな?
でも自分も最近東京に住むようになって分かったんですが、魔人達の行動範囲は広いですね。あの真神の五人が放課後移動する度一々電車に揺られているのかと思うと何だか笑えます。この話の様に壬生が龍葉を送ってから帰るとなると、往復でゆうに二時間は掛かりますよね。交通費も掛かるし(笑)う〜ん…元気な高校生達だ…。
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